代表部員の活動:杉山 大介二等書記官

令和5年5月15日

AHTN -ASEAN貿易の共通言語-

二等書記官 杉山大介
(2021年~ 財務省より出向)


※以下の内容は、ASEAN日本政府代表部の立場や意見を代表するものではなく、あくまで私自身の個人的見解です。  

1 「HSコードとは」

 皆さんは「HSコード」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

 「HSコード」は、「商品の名称及び分類についての統一システム(Harmonized Commodity Description and Coding System)に関する国際条約(HS条約)」に基づいて定められた6桁のコード番号です。

 2022年7月現在、世界税関機構(WCO: World Customs Organization)が管理している同条約には、日本をはじめ159の国及びEUが加盟しています。また、非加盟国であってもHSコードを使用している国と地域があり、それらを含めると200以上の国と地域がHSコードを使用しており、国際貿易の98%を超える取引にHSコードが利用されていることから、世界中の貿易にとってHSコードは不可欠なものとなっています。

 あらゆる商品を組織的・体系的に分類するための品目表の改定が5年ごとに行われており、例えば、日本では、2022年1月から、HS2022が適用されています。品目数は次第に増加傾向にあり、HS2017では5,387品目でしたが、HS2022では5,612品目となっています。

 また、実際に貿易される商品を各品目に分類するために、WCOではExplanatory Notes (EN)と呼ばれる分類の解説書を作成しております。

2 「AHTNとは」

 上記HSの6桁のコードに加え、各国は各コードの中に独自の細分を加えることも認められています。例えば、日本では、下3桁を加えた合計9桁のコードを輸出入の際に利用しています。

 一方、ASEAN各国では、下2桁を加えた合計8桁の共通コードを利用しており、このASEAN共通コードのことを「ASEAN統一関税品目分類コード(AHTN : ASEAN Harmonized Tariff Nomenclature)と呼んでいます。ASEAN域内では、このAHTNに基づいて、貿易統計の集計、関税率の設定、輸出入関連規制の適用といったことが行われており、ASEANで貿易を行う上で、AHTNは必須と言っても過言ではないものとなっております。

 AHTNについても、HS改正にあわせて、品目表の改定が5年ごとに行われています。HSと同様、品目数は次第に増加傾向にあり、AHTN2017では10,813品目でしたが、AHTN2022では11,414品目となっています。

 また、ASEAN域内における下2桁の分類に対応するために、ASEANではSupplementary Explanatory Notes (SEN)と呼ばれる分類の解説書を作成しています。

3 「AHTNに係る日本の支援」

 このようにAHTNはASEAN貿易において欠かせないものですが、品目分類は技術的かつ高度な専門性が要求される分野です。AHTNの改正のためには、品目表の改正にASEAN10か国間で合意するのみならず、それに付随する上記SENの改正や、旧品目表と新品目表の間の移行関係の整理といった作業についても、限られた時間で行う必要があります。また、各国国内での施行に際しては、政府関係者・事業者への周知といった作業も必要となります。

 日本は日ASEAN統合基金(JAIF: Japan-ASEAN Integration Fund)を用いて、このAHTNの改正・施行の取組を継続的・包括的に支援しています。改正段階における支援のみならず、改正内容が固まった後も、各国の分類の中心となる政府職員への支援プログラム(Train-the-Trainer Program)を通じて、各国において円滑に改正内容が施行されるようサポートしています。

4 終わりに

 本稿では、各論について述べましたが、より総論的な話について知りたい方は、私の前任が書いた「日ASEAN協力 -税関協力を一例として-」を御覧いただければと思います。