代表部員の活動:鈴木 孝宏参事官
令和6年2月1日
信頼のパートナー参事官 鈴木 孝宏(2021年~ ) ※以下の内容は、ASEAN日本政府代表部の立場や意見を代表するものではなく、あくまで私自身の個人的見解です。 |
![]() (日ASEANのマスコットキャラクターJABOTとともに写る筆者) |
1 「信頼のパートナー(Trusted Partners)」2023年12月の日ASEAN特別首脳会議で採択された共同ビジョン・ステートメントの標題で掲げられた言葉です。2023年、日本とASEANの友好協力関係は50周年を迎え、多くの周年行事が開催されるとともに、50周年の締めくくりとして首脳が一堂に会する日ASEAN特別首脳会議が開催されました。首脳会議では、自分自身が交渉で携わってきた成果文書が満場の拍手で採択され、大変感慨深い一年となりました。 2 日本政府代表部での仕事前置きが長くなりましたが、私は2021年9月にインドネシアに着任し、昨2023年の日ASEAN友好協力50周年を含め、約2年半の間、ASEAN外交にどっぷり浸かってきました。ASEAN外交は非常にダイナミックで、ASEAN10カ国とはもちろん、様々な域外国とのやり取りが毎日のように行われています。代表部の仕事は主に2つで、一つは、日本政府がASEANに拠出する基金(日ASEAN統合基金)を使ったプロジェクトを通じて、様々な分野における日本とASEANの協力を進めていくこと、もう一つは、域外国を含むASEANの枠組み、特にASEAN+3(日中韓)、それにインド、豪、NZ、米、露を加えた東アジア首脳会議の枠組み等において、意見交換や成果文書の交渉を行うことです。私自身は、後者に主に携わってきました。 交渉は、長時間にわたり行われ、ときに議論が白熱し、張り詰めた雰囲気となることもありますが、交渉が終わった後には、なんとも言えない充実感、達成感があります。 3 インド太平洋、そして世界の成長の中心地、ASEANインド太平洋地域、そして世界の成長の中心地として、ASEANは注目を集めています。この50年間におけるASEANの経済成長は著しく、2022年のASEANのGDPは世界第5位となり、2026年には、日本のGDPを追い越すと予想されています。豊富な人口を有し、特に若い世代が躍動し、パワー漲るASEANは、これから日本が成長を続けていくために必要不可欠な、大切なパートナーです。高齢化社会、少子化、労働力不足等の様々な課題を抱える日本の未来は、ASEANとの関係強化にかかっています。私が赴任しているインドネシアを含め、これまでASEANの様々な国で、ASEAN各国の外交官や人々と交流する機会が数多くありました。そうした中でよく耳にするのは、日本に対する高い評価です。食事や文化、観光、ホスピタリティなど、人によって理由は様々ですが、実際に東南アジアの多くの世論調査でも示されているとおり、ASEANの人々が持つ日本のイメージは非常に良いというのは事実としてあると思います。 一方で、ASEAN各国は、デジタル化を含め日本よりも進んでいる面が数多くあり、また、失敗をおそれず、チャレンジする精神の下、どんどん新しい制度や取組を導入しており、こうした姿勢を日本は見習わなくてはならないと感じています。お互いが学び、共に成長していく「共創」、まさに今、日本とASEANが目指すものです。 4 おわりに日ASEAN友好協力50周年のキーワードは、「信頼」と「共創」です。半世紀先の将来、我々の子供達が生きる社会は、これまで先人達が築いてきた「信頼」の土台を基に、我々がどのように未来を描き、それを「共創」して実現していくのか次第です。ASEANを見て、日本を見つめ直す、そうした謙虚な姿勢を持ちながら、50年後、一層強固で、繁栄した「信頼のパートナー」となるよう、歩みを進めていきたいと思います。 |