代表部員の活動 : 一等書記官 坂本光英

令和7年6月26日

デジタル分野における日本とASEANの協力の一風景


一等書記官 坂本 光英
(2022年~ 総務省から出向)

※以下の内容は、ASEAN日本政府代表部の立場や意見を代表するものではなく、あくまで私自身の個人的見解です。
 

インドネシアで開催されたASEAN関連外相会議にて

1 はじめに

 ASEANは、国境を越えて、国土・人口規模、経済規模・経済発展水準、政治体制、宗教、社会文化が異なる東南アジアの国々が協力するための地域的な枠組です。ASEANでは、域内のASEAN加盟国同士による協力だけでなく、ASEANとASEAN加盟国以外の国々との協力も進めています。
 私は、ASEAN日本政府代表部の一員として、デジタル分野や情報(放送)分野などにおける日本とASEANとの協力を進めてきました。

 

2 デジタル分野や防災分野でのASEANとの協力

 インターネットをはじめとするデジタル空間は国境のないもう一つの世界であり、多国間での協力を進めることがふさわしい分野の一つであるといえます。例えば、サイバー攻撃は国境を越えて行われるため、サイバーセキュリティの強化は、日本とASEANの双方にとって共通の課題となっています。そこで、日本はASEANと協力し、ASEAN域内におけるサイバーセキュリティ能力の向上に取り組んでいます。その一環として、日ASEANサイバーセキュリティ能力構築センター(AJCCBC)(タイ・バンコク)への支援により、ASEAN加盟国を対象とするサイバーセキュリティトレーニングを提供しています。
 また、災害大国である我が国は、ASEANの防災分野における情報通信の高度化にも取り組んでいます。ASEAN加盟国が被災した際、ASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)(インドネシア・ジャカルタ)が司令塔となり、被災したASEAN加盟国への支援が行われます。AHAセンターの活動を支える情報通信システムの高度化を含む日本の支援は、その具体例です。助ける側が助けられる側になり、またその逆もあります。災害大国である我が国が、ASEANと防災分野での協力を進めることは重要です。

 

3 ASEANの同僚

 代表部での業務は、文字通り、ASEAN域内を飛び回ります。ASEAN日本政府代表部の所在するインドネシア・ジャカルタを起点に、ブルネイからベトナムまで、時にはトランジットをしながら、ASEANとのいくつもの会合に参加することになります。
 デジタル分野の会合に参加していると、自然とASEAN加盟国の参加者と顔見知りになります。また、日本と同様に、ASEANとの会合に参加しているASEAN加盟国以外の国の人たちとも知り合いになります。最初は仕事の話だけだったのが、いつしかお互いの家族のことや最近あった面白い出来事などを話すようになり、お互いに相手とその家族のことを気遣い、また次の会合でお会いしましょうと言って会合を後にするようになりました。こうしたつながりは、とても貴重なものだと感じています。

 

4 おわりに

 日本とASEANとは信頼のパートナーとしてこれまで深い関係を築いてきました。一書記官として、わずかでも日本とASEANとの協力深化や信頼関係の更なる醸成に役に立てることがあれば、それは私にとって望外の喜びです。