代表部の活動 : 宮澤武志 一等書記官
令和3年5月6日
一方通行のASEAN協力ではなく、
|
![]() |
1 はじめに突然ですが、これは何の順位でしょうか?ASEAN加盟10か国全ての国と比べて日本の順位が低く、また、日本と同じくASEANの対話国(Dialogue Partners)である米国、ロシア、韓国、中国と比べても日本の順位が一番低くなっています。 17位:フィリピン 36位:ラオス 54位:シンガポール 79位:タイ 87位:ベトナム 101位:インドネシア 103位:カンボジア 109位:ミャンマー 111位:ブルネイ 112位:マレーシア 120位:日本 (1位:アイスランド、2位:フィンランド、3位:ノルウェー、30位:米国、81位:ロシア、102位:韓国、107位:中国) これは、世界経済フォーラム(WEF:World Economic Forum)が2021年3月に公表した、世界各国の男女格差を測る「ジェンダー・ギャップ指数(GGI:Gender Gap Index)」の順位です。この指数は、経済、政治、教育、健康の4分野で女性の地位を分析し、総合順位が決められています。調査対象156カ国のうち、日本は120位。過去最低であった前回(121位)からひとつ順位を上げましたが、主要7か国(G7)やASEAN加盟10か国を入れた中で最下位となっています。調査対象の4分野以外を細かく見ることができれば、必ずしもそうではないかもしれませんが、総じて見れば、日本は圧倒的な途上国であることが見てとれます。この問題に関しては、日本がASEANをはじめ世界各国を見習う立場にあるということが言えると思います。 2 日ASEANスポーツ協力: 一方通行の協力ではなく、共に問題を解決したいこのように、我が国の男女平等の進展は世界的にみて遅れている水準にあります。スポーツの分野においては、例えば、開催の準備が進められている東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会において、様々な課題に対応すべく女性の役員の比率を高める対応がとられたことは記憶に新しいところです。ただ、スポーツ分野での女性の参画向上に関しては、日本のみならず多くの国々が共通の課題を抱えているところであり、日本はASEANとの間でもこの分野における協力を行っています。東京オリンピック・パラリンピックの開催決定を契機として、我が国はASEANとのスポーツ対話を開始しました。2017年10月に第1回「日ASEANスポーツ大臣会合」を開催し、その後、定期的に日本とASEANは対話を続けています。現時点でスポーツの分野でASEANとの対話枠組みを持つのは日本のみであり、それだけASEAN側の日本に対するスポーツ分野における期待の大きさがうかがえます。第1回日ASEANスポーツ大臣会合において、日ASEANスポーツ協力は以下の4分野を優先して取り組むことを決定しました。(1)「女性スポーツ参画実施率の向上」、(2)「体育指導者の育成」、(3)「障害者スポーツの発展」、(4)「アンチドーピングに関する能力開発」。現在、これらの分野について具体的なアクションを起こすべく、日本とASEANで検討を進めています。 この第一の優先分野である「女性スポーツ参画実施率の向上」に関して、それを専門的に議論するため、日ASEANスポーツ大臣会合とは別の対話の枠組みとして、2019年に第1回「日ASEAN女性スポーツ会合」を開始し、今後、定期的に女性スポーツ分野に関する日ASEAN協力の検討を行っていくこととしています。この課題に対しては、日本が一方的にASEANへ協力・支援を行うというものではなく、日本としてもASEAN各国と同じ課題を持つからこそ、双方が共通の課題と認識して、双方向での協力を行うことにより解決しようというものです。 女性スポーツ参画実施率の向上に向けては、様々な課題があります。経済的な問題、実施環境(インフラ)の問題、ヘルス・メンタルケアの問題、指導者の問題、宗教的な問題、スポーツを支える組織の問題等々。日本が進んでいる部分については日本の知見をASEAN側へ共有し、日本が遅れている部分についてはASEAN側から知見を得る。このように日本とASEANが共に共通の課題を解決していく、「Win-Win」の関係を築いていきたいと思っています。 ![]() 第1回日ASEAN女性スポーツ会合の様子(手前左側が筆者) 3 東京オリンピック・パラリンピックを契機とした、女性スポーツ参画向上のための取組東京オリンピック・パラリンピックの開催に合わせて、日ASEAN統合基金(JAIF:Japan ASEAN Integration Fund)※を活用したプロジェクト「Japan-ASEAN Sports on Action」を計画中です。女性のスポーツ実施率の向上に焦点を当て、(1)子供を含む女性スポーツ参画に関する意識向上とそれを促す方策の検討を行うため、スポーツ団体関係者や女性の若手リーダー、各国政府関係者が参加するワークショップを開催し、また、(2)東京オリンピック・パラリンピックメダリストや入賞者をはじめとする現役女性アスリートや専門家を交えてアスリートの「生の声」を聞く対話集会を実施する予定です。(1)は東京オリンピック・パラリンピックの開催に合わせて2021年8月に日本側の主催で、(2)はASEAN各国のメダリスト・入賞者を表彰するイベントに合わせて2021年12月頃にASEAN側の主催で開催予定です。(1)と(2)の実施を通じて、日本及びASEAN各国における女性参画に関する「行動計画」の作成を目指しています。東京オリンピック・パラリンピックを契機に、我が国としても抱えているスポーツ分野における女性参画の課題のみならず、日本とASEANが共に抱えている課題の解決に向けて議論を活発化させ、日ASEANスポーツ協力をより一層促進させていきたいと思います。 ※日ASEAN統合基金(JAIF:Japan ASEAN Integration Fund)https://jaif.asean.org |