代表部員の活動 : 久住駿介 三等書記官
令和6年5月14日
ASEAN代表部での広報と厚生労働のお仕事三等書記官 久住 駿介 (2022年~ 秋田県より出向) ※以下の内容は、ASEAN日本政府代表部の立場や意見を代表するものではなく、あくまで私自身の個人的見解です。2021年9月末時点の状況を基に記載しています。 |
![]() アンコール・ワットを背景に写真に映る筆者 |
1 はじめに私は外交実務研修員として、秋田県より東京の外務本省に派遣され二年間勤務した後、二年間、ASEAN日本政府代表部(以下、当代表部)で書記官として勤務しております。主な業務は、当代表部の広報業務と厚生労働業務の大きく二つを担当しておりまして、それぞれの業務がどういったものなのか、簡単に紹介していきたいと思います。 2 ASEAN10か国への広報当代表部は、ASEAN本部があるジャカルタに所在しており、日本とASEANに関係する会議やプロジェクトについて日夜、交渉や調整を行っております。それらの成果や日本の支援・協力といったものをASEAN10か国の方々に広報を行うことが主な業務になります。具体的には、SNS(Facebook、Instagram、YouTube、X)や、今皆さんがご覧になっている当代表部のウェブサイトでの発信、当代表部主催の講演会やシンポジウムの開催(昨年開催したものはこちら)、といったものがあります。 SNSやウェブサイトの発信は、ジャカルタからASEAN10か国に日本とASEANの協力や支援の内容について発信できる重要なツールになります。しかしながら、SNSはただ投稿しても誰も見てくれませんので、投稿内容は、分かりやすく、簡潔に、SNSのユーザーが興味を惹くコンテンツにした上で、伝えたいメッセージを載せることを心がけながら、現地職員や広報担当の同僚と内容を決めて投稿しています。加えて、フォロワーがどのような投稿に興味・関心を持っているのか、そういった分析も定期的に行っています。もちろん全ての投稿に反響がある訳ではなく、残念ながら反響が少ないことの方が多いのですが、時には我々の予想していた通りの反響や、予想していなかった大きな反響(バズること)があり、このような時は、広報担当としては、とてもやりがいを感じる瞬間です。 また、この「代表部員の活動」のページのようにASEAN代表部がどういった業務しているのか、といったことを日本の方々にも伝えることも重要な業務だと思っています。 講演会やシンポジウムの開催は、SNSやウェブサイトの発信に比べると対象(参加者)は限定されてしまいますが、リアルタイムでのオンライン配信や、様々な制約で難しい場合などは事後にYouTubeで動画を配信することで、ASEAN10か国の方々が参加できるように工夫しています。講演会やシンポジウムのテーマも、以前開催した際に行ったアンケートの結果や、ASEANのなかで重要視されているトピックをテーマに設定するなどして、より効果的な事業となるように工夫をしています。 3 厚生労働分野における日ASEAN協力厚生労働分野はASEANにおいては、保健、社会福祉、労働と大きく3つの分野に分けられます。それぞれの分野で日本の官民による様々なASEAN各国への支援や協力が行われていますが、当代表部では主に日ASEAN統合基金(JAIF)を活用した日ASEAN協力が行われています。これまで様々な事業が行われてきていますが、最近のものを一部紹介すると、保健分野における医薬品の新規承認や規制基準が各国で異なることに対してのASEAN域内での平準化を目指す事業や農村部といった田舎での死産率を下げるための助産師の能力開発支援事業があります。 これらの事業は、ASEANからのニーズに基づいて、効果的な事業となるようにプロジェクトの妥当性やより効果的な事業となるように内容の調整をおこなった上で実施されています。 4 おわりに私は地方自治体からの出向者として当代表部で勤務していますが、元々秋田県では、埋蔵文化財の専門職員として勤務をしており、広報も厚生労働も全くの門外漢でした。ただ、勤務していく中で、広報に関して一番の課題としていたのは、1か国ではなくASEAN10か国を対象に、日本がASEANの文脈で支援・協力している話題をどうやって広報していくか、どうやったら関心を持ってくれるのか、というものでしたが、自分なりに答えを出すことはできました。 また、厚生労働分野についても、ASEANの様々なニーズに触れる中で、著しい経済成長を遂げ、若年層も多くエネルギー溢れるASEANが課題としていることが、現在の日本と共通することが多いこと、また日本が過去に克服してきた課題であることも多いことが分かり、世界的な社会問題について日本の知見や経験が果たせる役割は大きいのではないかと改めて感じました。 私が、業務を通して、日ASEAN協力や信頼構築に貢献できたのはほんの一部だと思いますが、ASEAN外交の最前線で勤務できていることは貴重な経験であり、今後の糧にしていきたいと思っています。 |