代表部の活動 : 水野 秀紀 防衛駐在官兼一等書記官
令和4年5月31日
地域の平和と安定の確保のためASEAN諸国への日本の貢献防衛駐在官兼一等書記官 水野秀紀 (2020年6月~ 防衛省より出向) |
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1 はじめに(ASEANの重要性について)ロシアによるウクライナへの軍事侵略が行われ、力による現状変更の動きが、今の時代でも、実際に行われることを世界中の人々が目の当たりにしました。ウクライナへの侵略を機に国際社会はロシアへの圧力を高め、これにより物価の高騰等、世界は大きな影響を受けています。遠く離れた地域での一国による軍事侵略が世界全体を不安定化させることを示しています。このような力による現状変更がインド太平洋地域で起こった場合、その影響はますます深刻なものとなるのは確実です。なぜなら、インド太平洋地域は、我々のシーレーンの要衝を占め、我が国ばかりでなく世界の繁栄の中核であるからです。こうした力による現状変更を防ぐため、これまで以上に2国間、多国間を通じた多角的・多層的な安全保障協力の重要性が高まってきています。安全保障協力の中でも重要な役割を占める枠組みの1つがASEANです。 ASEANは、我々のシーレーンの要衝を占め、戦略的にも重要な地域に位置し、我が国及び地域全体の平和と繁栄の確保において重要な役割を果たしているからです。また、ASEAN諸国においては、域内における防衛当局間の閣僚会合であるASEAN国防相会議(ADMM)のほか、日本を含めたASEAN域外国8か国(米国、豪、韓国、印、ニュージーランド、中国及び2021年時点では、ロシア)を加えたADMMプラスが開催されています。ADMMプラスは、ASEAN域外国を含むインド太平洋地域の国防大臣が出席する雄一の公式会議であり、地域の安全保障・防衛協力の発展・深化の促進という観点から、極めて大きな意義があり、防衛省・自衛隊も積極的に参加・支援してきてきました。2 日本のイニシアティブによる取組み防衛省・自衛隊が主催している多国間安全保障対話に、日ASEAN防衛担当大臣会合があります。これは、2013年の日ASEAN特別首脳会議において、当時の安倍総理の提案に基づいて行われたもので、初めての日ASEAN間の防衛担当大臣会合になります。これまで6回の会合が実施されてきましたが、この中で、日本は、『ビエンチャン・ビジョン』と呼ばれる日ASEANの防衛協力の指針を発表しました。これは、我が国独自のイニシアティブで実施するものであり、ASEAN個別の国に加えて、ASEAN全体の能力向上に資する協力を推進し、地域の平和、安全及び繁栄に貢献することを目標にしています。具体的には、「法の支配」が重要との観点から、国際法に関するセミナーや国際法シンポジウムを開催したり、災害に対応する国防省担当者を日本に招聘し、人道支援・災害救援(HA/DR)に関するセミナーを実施したり、机上訓練や防災訓練などの視察を行ったりしてきました。また、昨今では、サイバーセキュリティなど新たな分野での脅威にも備える必要があるため、2020年第6回会合では、「日ASEAN防衛当局サイバーセキュリティ能力構築支援事業」を発表し、2022年1月サイバーセキュリティ能力構築支援を実施し、各国から感謝と高い評価を受けています。このように、日本は、ASEAN加盟国の参加者と、国際法の認識共有、海洋安全保障、人道支援災害救助(HA/DR)やサイバーセキュリティなど様々な分野でのセミナーや研修等を通じ、各国との相互理解と人的ネットワーク構築の促進を図りながら、各国の能力向上を支援しインド太平洋地域の平和と安全に貢献しています。 3 終わりにロシアによるウクライナの軍事侵略に見られるように、力による現状変更が顕在化し、ますます不安定化する国際社会において、多国間の信頼関係の構築は極めて重要となっており、中でもASEANの存在意義は極めて大きなものとなっているのは冒頭でも触れたとおりですが、このように多国間との防衛協力の重要性が高まる安全保障環境の中において、ASEAN各国との防衛交流に携わる仕事ができることは、大変光栄であり、やりがいのある仕事と感じています。日本のASEANへの貢献も肌で感じることができ、今後も、地域の平和と安定のため、また、日本のASEAN地域のプレゼンス向上にも貢献できるよう職務に邁進していきたいと思います。 |