代表部員の活動 : 専門調査員 里内 舞
令和8年4月7日
外交101: 専門調査員の視点から専門調査員 里内 舞 (2024年~2026年) ※以下の内容は、ASEAN日本政府代表部の立場や意見を代表するものではなく、 あくまで私自身の個人的見解です。 |
![]() クアラルンプールで開催されたASEAN・WPSサミットにて |
1 はじめに在外日本国大使館で働くには、実は外交官以外にも実は様々なルートがあります。その一つが、外務省委託・国際交流サービス協会が派遣する「専門調査員」という職種です。名前から、何かを専門的に調査する研究者のようなイメージを持たれるかもしれません。実際、在外公館によっては、任地における日本関連のニュース等を収集・整理し、本省に報告する業務が中心となる場合もあります。一方で、外交官のように会議に参加し、他国関係者とネットワーキングや意見交換を行うなど、外交の現場に身を置く機会もあります。さらに、開発協力事業や文化広報事業などにも携わることができ、幅広い実務経験を積むことが可能です。国際協力・開発分野を志す者にとって登竜門ともいえる専門調査員は、世界各地の日本国大使館および日本政府代表部に配置されています。私も、将来的に国際機関でのキャリア形成を志す一人として、必要なスキルと経験を培うため、マルチ外交を担うASEAN日本政府代表部をファーストキャリアに選び、新卒としてインドネシア・ジャカルタに赴任しました。 2 専門調査員の仕事ASEANに対して日本が促進する協力(いわゆる日ASEAN協力)は、2023年に採択された日ASEAN友好協力に関する共同ビジョン・ステートメント及び実施計画に基づき、多岐にわたる分野をカバーしています。その中で私は、平和構築、安全保障、ジェンダー、人材開発分野を主に担当し、加えて国際機関連携事業や広報・イベント企画など、幅広い業務に従事させていただきました。当代表部の専門調査員ポストは比較的新しく、2022年に新設されて以降、私が2代目となります。もともとは、2023年の日ASEAN友好協力50周年に関連するイベントや広報業務を目的として設置されたポストであったため、周年事業終了後の2024年に赴任した私は、業務内容を模索するところからのスタートでした。幸いにも、希望や主体性を尊重していただける環境に恵まれ、上記の協力分野を担当することとなり、そこからさらに業務の幅を広げ、多様な案件に携わることができました。 また、専門調査員のみが応募可能な「調査出張」という制度があります。これは、自身の担当分野や関心分野について現地調査行い、報告書を提出するものです。私も2年目に本省へ企画書を提出し承認を得て、「DX・GX分野への女性・若者参画を通じた経済的エンパワーメントと、WPSおよび包括的で強靱なコミュニティ構築への貢献」をテーマに、フィリピンの首都マニラにて3泊4日のインタビュー調査を実施しました。普段は接点の少ない市民社会団体やソーシャルビジネス、スタートアップ関係者など、草の根レベルで活動を広げる団体や個人と対話できたことは、支援現場をより深く理解するうえで、非常に貴重な経験となりました。 3 「信頼」の価値この2年間、外交の現場に身を置く中で、一人の日本人として、また政策発信に関わる立場として、考え続けてきた問いがあります。それは、「外交とは何か」、そして「その成果をどのように測るのか」という点です。外交は、ニュースで取り上げられる首脳・外相会議といった政府間の枠組みにとどまらず、文化外交や知的外交などソフトパワーを通じた政府対民や民対民の関係へと広がっています。私が関わってきたODA事業もこうした多層的な外交の一部です。不安定な国際情勢の中で、こうした多層的な外交の重要性は、ますます高まっていると感じています。ASEAN加盟国から、日本は度々「信頼のパートナー」と評されます。これは、包括的戦略的パートナーシップをも超える、日ASEAN関係の質の高さを示すものです。この日本に寄せられる「信頼」こそが、これまで積み重ねられてきた外交の成果であり、日本が東南アジアをはじめとする国々と対話や協力を続ける意義であると思います。「外交=信頼の構築」という考え方は一見抽象的に思えるかもしれません。しかし、支援の規模や一時的な関与の大きさが、そのまま信頼の深さに結びつくとは限りません。むしろ、相手国に耳を傾け、理解しようとする謙虚な姿勢と、相互に利益をもたらす共創関係の継続こそが、長期的な互恵関係を築く基盤になると信じています。国と国との信頼関係ほど、時間をかけて地道に築かれ、かつ強固なものはなく、疑心暗鬼になりがちな不確実性の高い国際関係において、必要不可欠な要素です。この2年間の仕事が、わずかでもその信頼関係の深化に寄与できていたのであれば、これ以上の喜びはありません。 4 かけがえのない思い出プライベートにおいても充実した2年間でした。東南アジアは初めてでしたが、ジャカルタは日本食やカラオケ、日本映画などへのアクセスも良く、生活面で不便を感じることはほとんどありませんでした。また、インドネシア国内の様々な島々をはじめ、ASEAN加盟国のうち10カ国を旅行や出張で訪れる機会に恵まれ、多様な文化や歴史、生活様式に触れることができました。さらに、代表部員やそのご家族とともにバニュアンギのイジェン湖を訪れ、ブルーファイアを見るために登山をし、翌日にはトレイルランニング大会に出場するなど、貴重な経験を重ねました。その他にも、プラウスリブ島でのシュノーケリングなど、多くの思い出があります。とても温かく仲の良い同僚や先輩方に恵まれ、楽しく充実した日々を過ごすことができたことは、何よりの財産です。これらはすべて、生涯忘れることのない大切な思い出です。 5 おわりに国際情勢が刻々と変化する今、ASEANは日本にとっても他の主要国にとっても、地政学的・社会経済的に極めて重要な存在です。その最前線に位置するASEAN日本政府代表部で、2年間にわたり多様な業務を経験し、多くのことを学び、視野を広げる機会を得られたことに、心から感謝しています。今後も様々な形で日ASEAN協力に貢献できるよう、自身のキャリア形成を含め、挑戦を続けていきたいと思います。 |
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ASEAN日本政府代表部 
