代表部員の活動 : 二等書記官 小林沙衣

令和8年7月10日

あるASEAN代表部職員が見た3つのASEAN


二等書記官 小林沙衣
(2024年~2026年)

※以下の内容は、ASEAN日本政府代表部の立場や意見を代表するものではなく、
あくまで私自身の個人的見解です。
 

インドネシア・東ヌサトゥンガラ諸島、クパンの夕焼け

1 はじめに

ASEANについてどのようなイメージをおもちでしょうか。よく知っているという方も、聞いたことないという方もいるかもしれません。かくいう私は東南アジアとASEANの違いとは何だろうか※、シンガポールやバンコクではなくジャカルタにASEAN本部はあるのかと思いながら、片道チケットを手にジャカルタに到着しました。そんな私が、2年間、ASEAN日本政府代表部ではたらく中で見た3つのASEANを紹介し、皆様に少しでもASEANを身近に感じていただければと思います。
 ※ちなみに、東南アジアという地域を指す言葉とは異なり、ASEANは本部をジャカルタに置く11か国で構成される地域協力機構のことを指します。ASEAN日本政府代表部は、大使館が特定の国への日本政府の代表であるのと同じようにASEANという地域経協力機構への日本政府の代表となります。

 

2 多様性の中で成長するASEAN

 私の仕事は、日本とASEANの首脳が合意する共同声明の交渉や、地域で実施される様々なプロジェクトを企画・実行でしたが、その中で強く感じたのはASEANの多様性でした。ASEANは11か国から成る組織で、すべての国を合わせた面積は日本の12倍、人口は日本の5.6倍です。さらに経済をみると、一人当たりGDPでは最も高いシンガポールは日本の2.9倍、最も低い東ティモールは日本の10分の1以下となっていますし、政治体制も様々です。したがってひとくちにASEAN加盟国・東南アジア諸国といっても外交上の立場、政策上の優先事項も多様です。例えば、島嶼国であるインドネシアやフィリピンは海洋協力に、国民平均年齢の高いタイは高齢化に、除去されていない地雷がまだ存在しているカンボジアは地雷対策に、高い関心があるといったような具合です。交渉が難航した時にはどの国が本当に反対をしているのだろうか、どの国が日本と近い立場なのだろうか、と考えたり、プロジェクトを実施する際にはどの国が一番関心を持ってくれているだろうか、どの国にはリソースが足りないだろうかといったことを考えたりすることで、物事が少しずつ動いていくこともありました。「ASEAN way」と呼ばれる対話やコンセンサスを重視するASEANの方針を尊重しつつ、ひとつひとつの国と向き合うことが日ASEAN協力の鍵であったかもしれません。

 

3 日本への信頼が息づくASEAN

 ISEASというシンガポールのシンクタンクの統計では日本が8年連続「最もASEAN加盟国に信頼されている国」第1位となっています。ここでの2年間はまさにその信頼を感じ、私もその信頼や期待を受け継ぐひとりとなれるよう精進する日々でした。日本は、日中韓とASEANをメンバーとするASEAN+3をはじめ、全てのASEAN枠組み(ASEANを中心として他のパートナー国が参加する枠組み)に参加しており、金融・デジタル・エネルギー・農業・越境犯罪・防災といった本当に多くの分野別での取組を進めています。日本だから相談したい、日本だから協力したい、仕事仲間から聞くそんな声も少なくはありませんでした。また現地では、日本が引き起こした苦難の歴史を乗り越えて、あたたかく我々を迎え、日本を尊敬し日本文化に親しんでくれている多くの人がいました。目の当たりにした爆発的抹茶ブームの到来にも言及しておきたいと思います(笑)。

 

4 現地で感じてほしいASEAN

 そして最後になによりも、皆様には実際にASEAN加盟国(つまりは東南アジア)を訪れ、上記で述べたASEANの多様性、そしてASEANから日本に寄せられる信頼を感じていただければと思います。ASEAN日本政府代表部で働く中で、幸いにもASEAN加盟国のほぼすべての国を出張や旅行で訪れる機会がありました。また地方開発という分野を担当していたこともあり、各国の地方の名産品を手にしたり田舎を訪れる機会もありました。シンガポールやクアラルンプール、ホーチミンといった活気づき発展しつづける色鮮やかな都市、アンコールワット・アユタヤ・ボロブドゥールいった歴史の宿る遺跡、壮大な自然とあたたかい人々や世界でそこにしかいない動物たちに出会えるカリマンタン島やフローレス島など、訪れる価値のある場所がたくさんあります。

 この文章がASEANの多彩な魅力に触れる一助となれば幸いです。
 日本とASEANの関係が、これからも様々なつながりによって、さらに豊かで強いものとなることを願って。