代表部員の活動 : 公使(次席) 中條一夫

令和8年7月27日

在外公館の休日は日本の休日?現地の休日?


公使(次席) 中條一夫
(2023年~2026年)

※以下の内容は、ASEAN日本政府代表部の立場や意見を代表するものではなく、
あくまで私自身の個人的見解です。
 

ASEAN本部の国際会議場にて

1 はじめに

 私のASEAN日本政府代表部での職位は「公使」、役職は「次席」です。大使が出張や休暇で任地を離れる際には臨時代理大使となりますが、普段どんな仕事をしているかは、会社の副社長や学校の副校長と同じく、外部からは分かりにくいと思います。大使は対外的に組織の代表ひいては日本の代表としての活動が中心となりますが、次席は普段は総務、会計、人事など組織の運営を総括しています。文書管理、情報管理、安全管理、現地職員管理など、管理と名の付く仕事の多くは、大使を補佐する形で次席が行っています。
 今日は、その中でも総務の仕事に属する、代表部の休館日を決める仕事について紹介します。たまに誤解されて「外交官は日本の休日と外国の休日と両方休めるのですか」と尋ねられますが、そんなことはありません。休める日数は日本と同じです。

 

2 休館日の日数は日本の休日の日数と同じ

 毎年秋になると、東京から、来年の日本の行政機関の休日は何日です、という連絡が届きます。行政機関の休日というのは、土曜・日曜に加え、国民の祝日および年末年始です。この日数は、曜日の並びによって毎年微妙に異なります。令和8年(2026年)の場合は、土曜・日曜を除くと21日です。世界各地にある日本の在外公館では、土曜・日曜に加え、これと同じ日数を翌年の休館日として定めることになります。この日数をどう割り振るかは各公館に委ねられています。

 

3 日本の休日の日数が現地の休日の日数よりも多い場合

 在外公館では、主な仕事相手となる現地の政府機関や各国の外交団や在留邦人が現地の暦に基づいて活動していることから、基本的には現地の休日を優先的に休館日にします。日本の休日の日数が現地の休日の日数よりも多い場合は、残り日数を、日本の国民の祝日の中から割り振ります。ここをどう割り振るかが総務の腕の見せ所です。
 日本の国民の祝日の中からどの祝日を休館日に割り振るかについては、「より伝統的な祝日を重視」という考え方、「3連休になる祝日を重視」という考え方など、さまざまな考え方があります。令和8年の当代表部においては、現地の祝日が年の前半に集中しており、8月25日(ムハマッド誕生の日)から12月25日(クリスマス)まで祝日がなかったことから、「休館日は適度に分散した方がよい」という考え方もあり、日本の国民の祝日の中から、10月12日(スポーツの日)と11月23日(勤労感謝の日)を休館日として定めました。

 

4 日本の休日の日数が現地の休日の日数よりも少ない場合

 日本の休日の日数が現地の休日の日数よりも少ない場合、総務は毎年この時期に知恵を絞ります。在外公館では、日本から赴任する日本人職員と現地で採用する現地職員の双方が働いています。現地職員が「なぜ世間は祝日なのに我々は働かねばならないのか」と不満を抱かないよう、日本の祝日について丁寧に説明しつつ、皆が納得する形で休日を設定する必要があります。
 私が十数年前に勤務していたカンボジアでは、国王誕生日や前国王誕生日が3連休であるなど祝日の日数が日本よりも多く、すべての祝日を休館日にすることができず、どの祝日を開館日に定めるかの調整には苦労しました。(その後カンボジアでは祝日数が削減され、国王誕生日と前国王命日(崩御後に誕生日から命日に変更)は当日のみが祝日です。)

 

5 さまざまな現地事情も留意する

 大半の国では土曜と日曜が休日ですが、イスラム圏では金曜が休日(週休二日の場合は金曜と土曜が休日)の国があるなど、国によってさまざまな現地事情があります。
 インドネシアでは、祝日は日本より若干少ないですが、有給休暇取得奨励日という制度があります。飛び石連休の合間の平日や、重要な祝日の前後の平日を、政府が指定して「この日に有給休暇を取得しましょう」と奨励する制度であり、役所や銀行は休業します。多くの民間企業も休業し、実質的に祝日に準じる扱いになります。このような現地事情にも留意する必要があります。
 他方で、日本の在外公館、特に領事業務が多い公館においては、休館日が連続すると日本人旅行者や在留邦人に不便をかけることがあるため、連休が長ければ長いほどよいという訳でもありません。このように休館日の決定に際してはさまざまな事情に留意する必要があります。
 いずれにせよ、最終的には在外公館長(大使や総領事など)の承認を得て翌年の休館日を決定し、東京に報告して対外的に公表します。しかし国によっては年の途中で急に新たな休日が追加されたり休日が変更されたりすることもあり、油断はできません。

 

6 おわりに

 結果的に、日本の在外公館では日本の国民の祝日の多くは勤務日です。日本の連休に外交案件で日本から来訪される方には通常通り業務対応できる一方、親戚や知人が日本の連休に合わせて現地を来訪しても、職員は通常の勤務日なので日中はご一緒できないことがあります。現地にお立ち寄りの際は、ぜひ事前にご相談ください。