ASEAN2025を実現するための日本の協力(テロ対策)

2016年2月

1. 総論

テロは,いかなる理由をもってしても正当化できず,断固として非難されるべきものです。国際テロ組織「アル・カーイダ」及び関連組織による活動に加え,ここ数年,ISIL(イラクとレバントのイスラム国)を始めとするテロの脅威が増大する中,国際社会が一致してテロ対策を行うことが重要です。

2015年11月のASEAN首脳会議で採択された共同宣言「ASEAN 2025: Forging Ahead Together(共に前進する)」においても、共同体は寛容性と穏健性を奉じ、異なる宗教・文化・言語に対して敬意を払い、多様性の中の統一という精神を共有するとともに、暴力的過激主義に対処するとしています。また、国境を越える犯罪を含め既存又は緊急の問題に効果的かつタイムリーに対処する能力の向上を図るため、安全に関する包括的な手法を採用するとしています。

また、ASEAN2025では、具体的な行動項目として、脱過激化、更正及び再教育の経験共有による過激化防止のための協力、外国人戦闘員の流れを抑止するための協力、マネーロンダリング対策のための能力強化、国際的なワークショップやセミナーを通じたテロ対策法制の実施及び強化、対話国や国際機関との協力強化、テロリストや国境を越える犯罪組織に関する情報の共有促進等が掲げられました。


2. 日本の協力

我が国は,我が国と関係の深いASEAN各国と共に,これまでテロ対策を進めてきています。

2004年11月の日ASEAN首脳会談においては,テロ対策協力の強化を謳った「国際テロリズムとの闘いにおける協力に関する日ASEAN共同宣言」を採択しました。また、2014年11月の日ASEAN首脳会議においては、テロを防止・阻止するため二国間,地域及び国際的レベルでの協力の強化を謳った「テロ及び国境を越える犯罪との闘いにおける協力のための日ASEAN共同宣言」を採択しました。

2015年11月の日ASEAN首脳会議においても、安倍総理大臣は,暴力的過激主義を含むテロ・国境を越える犯罪対策に関してASEANとの協力を更に深めたい旨発言しました。

これまで、我が国はASEAN各国と共に、テロ対策の分野で次のような取組を進めています。

(1)日・ASEAN間の定期対話の開催等

2005年12月の日ASEAN首脳会議での合意を受けて,ASEAN全体との間でテロ対策を正面から取り上げ,率直な意見交換を行うことを目的として,2006年から「日・ASEANテロ対策対話」(大使級)が開催されています。

また、閣僚レベルでも、2013年から隔年で「日・ASEAN国境を越える犯罪に関する閣僚会議(AMMTC+日本)」を開催するとともに、テロ関連ウェブサイト共有データベースの設置等の実務的な協力を進めています。

(2)日・ASEAN統合基金(JAIF)を活用したプロジェクトの実施

2013年に日・ASEAN友好協力40周年を記念して開催された日ASEAN特別首脳会議において、安倍総理大臣は総額1億ドルの「JAIF2.0」を追加拠出する旨表明しました。「JAIF2.0」では、テロ対策が重点事項の一つとされています。これまで我が国は同基金を活用し、「東南アジアにおける若者とテロリズムに関する比較研究」に関するセミナーの開催、過激化対策に関する書籍の出版等に対する支援をしてきています。


JAIFを活用した過激化対策に関する書籍の出版(アラビア語の書籍を英語に翻訳)

(3)ASEAN地域フォーラム(ARF)を通じた協力

ARFにおいては,2001年から毎年特定の議題についての常設会合として,「テロ対策及び国境を越える犯罪に関するARF会期間会合(ISM)」が開催される等,テロ対策に関する議論が集中的に行われており,我が国は,こうしたARFの枠組みにおけるテロ対策協力の強化に向けた取組に積極的に参画しています。


今後とも、我が国は、「中庸が最善」の精神に基づき、テロの未然防止に向けてASEAN諸国と緊密に連携して取り組み、協力をより一層進める考えです。