金融分野における日本の対ASEAN協力

2016年4月

1. 総論

ASEAN各国は2007年、ASEAN経済共同体の創設に向けた「AECブループリント2015」において、サービスの自由な移動、資本のより自由な移動を通じ、十分に統合され、円滑に機能する域内金融システムの構築を目指すことを宣言しました。域内の金融統合にあたっては、急激な資本移動に伴う金融・資本市場の混乱を避けるため、各国が自らの政策目的及び経済の発展段階を勘案しつつ、それぞれ努力を行っていくことが必要です。ASEAN各国はこれまで、こうした方針に基づき、保険・銀行・資本市場におけるサービスの自由化や、域内の証券取引所の連携といった取組を進めてきました。

2015年11月のASEAN首脳会議で採択された「AECブループリント2025」においては、2025年に向けた域内金融統合への中期計画として、これまでの取組を継続しつつ、金融統合、金融包摂、金融安定化の3つの戦略的目標及び資本勘定の自由化、支払・決済手段の強化、能力構築の3つの分野横断的事項を設定しました。このことにより、域内の格差是正や、これまで既存の金融サービスを十分享受できなかった層にも配慮したものとなっています。


2. 日本とASEAN各国との金融協力について

日本はASEAN各国、中国及び韓国とともにASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁プロセスの下、金融危機の地域的な連鎖と拡大を防ぐため、外貨支払に支障を来した国に対し、通貨スワップ(交換)により短期のドル資金を現地通貨を対価として融通する枠組みであるチェンマイ・イニシアティブ(CMIM)や、域内の貯蓄を投資へ活用するための効率的で流動性の高い債券市場を育成することを目的としたアジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)等の地域金融協力を推進してきました。

ASEAN+3域内経済の監視・分析を行うとともに、CMIMの運用を支援することを目的として、2011年4月にシンガポール国内法人として活動を開始したASEAN+3マクロ経済リサーチオフィス(AMRO)は、2016年2月に設立協定が発効し、国際機関となりました。これにより、AMROが域内経済の安定にいっそう役割を果たしていくことが期待されます。


2014年10月 AMRO設立協定署名式

さらに、二国間の取組として、2013年5月、日本とASEAN5カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ)は二国間金融協力を強化していくことに合意し、取組を進めるための合同作業部会を設置し、継続的に協議を行っています。

これまで、二国間通貨スワップ取極の拡充及び再締結や通貨当局間のクロスボーダー担保取極の整備、日系企業等に対する現地通貨供給の促進、中小企業向け支援、金融監督当局間の技術協力に係る書簡交換の実施などを実現しました。


3. 今後の協力の方向性

2016年4月に予定されているASEAN財務大臣・中央銀行総裁会議において、ASEAN各国は「AECブループリント2025」に盛り込まれた各項目を着実に実施するための詳細を定めた、作業計画を策定する見込みです。日本としては、作業計画やASEAN各国の経済状況を考慮しつつ、引き続き、ASEAN域内の金融システムの発展に向けた取組に協力していきます。